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科学な本のご紹介:  明治・大正期の科学思想史

科学に佇む書斎
【2017/08/24】


明治・大正期の科学思想史500 
近代史の我々が教えられてこなかった部分には何があったのか。
健忘症な日本社会の過去を振り返るにも、さまざまな切り口があることがよくわかる。

価格も内容も、初心者向けではありません。
日本の近代史に少し知識がある人向けの、真摯な論考集。知のチャレンジ本。

科学の本金子亜由美 ”日本の「人民」がこれまでに経験してきた「戦争」とは、各地域を支配する封建領主である「武士」同士の勢力争いであった。その渦中において、彼らはあくまでも「傍観」する立場の「見物人」でしかなかった。”

科学の本中尾麻伊香 ”明治の幕開けと同時期に起こったのが、窮理学の流行である。とりわけ1868年に慶應義塾から出版された福澤諭吉の「窮理図解」と小幡篤次郎の「天変地異」がベストセラーとなり、日本初の科学啓蒙書ブームをもたらした。”

科学の本橋本明による各章の概説 
”福澤諭吉の「究(窮)理学」推奨の一環として「訓蒙窮理図解」の発刊があり、この科学啓蒙書が、封建制度下では一部の知識人たちが独占していた近代科学の知を、世俗化=平等化した役割は大きかったという。”

科学の本金子亜由美 ”ここで注意しておきたいのは、福澤をはじめとする明治期の啓蒙思想家たちが主に摂取した西欧の思想が、厳密にいえば、啓蒙主義の時代が過ぎ去った19世紀のものであったにも関わらず、彼らの思想が「啓蒙主義」的であったことである。”

科学の本橋本明による各章の概説 
”知識人階級に独占されてきた知を広く解放するために、福澤があえて「俗文」によって啓蒙書を刊行する過程で、それらのパロディとして登場する「戯作」が、シリアスな「窮理」の態度を「河童の屁」ほどの「軽々しさといかがわしさ」にまで引きずり落とす。”

科学の本中尾麻伊香 ”関東大震災をめぐる科学啓蒙の検討から浮かび上がってきたことは、科学啓蒙者たちにとっても震災がチャンスであったこと、彼らもまた震災を己の目的達成の機会として利用したことである。”

科学の本橋本明による各章の概説 
”関東大震災は「科学知識」、「科学画報」に代表される科学雑誌出版ブームの只中に起こった。
 これらメディアを通して、大震災を科学の重要性を訴える好機と捉える科学啓蒙家たちの論述は、地震そのものが天譴であるというより、地震に伴う災害が、それに対する備えをしなかった人々への罰であるという「天譴論的言説」でもあった。”

科学の本米家泰作 ”5万分の1地形図の完成という点でみれば、北海道や沖縄(大正時代)よりも、新たに植民地となった台湾が早く(明治時代)、統治の基礎資料となる地図の作成が急務であったことがよくわかる。”









『明治・大正期の科学思想史』
 金森修 編
 勁草書房
 


2010年に西洋を扱う『科学思想史』、2011年には『昭和前期の科学思想史』、2016年には『昭和後期の科学思想史』が出ていて、本書は締めくくりの第4弾。

橋本明  序章 
金子亜由美 国民(ネーション)と実学 -- 「啓蒙」と「戯作」の交点
夏目賢一 山川健次郎の科学思想と尚武主義 -- 物理学・社会学・富国強兵
藤原辰史 横井時敬の農学
米家泰作 明治・大正期の地理的知I 朝鮮半島の地誌と旅行記をめぐって
奥村大介 宇宙と国粋 -- 三宅雪嶺のコスミズム
橋本明  帝國大學と精神病学と精神病者
中尾麻伊香 天変地異をめぐる科学思想
一柳廣孝 千里眼は科学の分析対象たり得るか -- 心理学の境界線をめぐる闘争
奥村大介 附記

しかし。
テーマ以上に、編者の「魂」がもうどーしよーもなく見守ってしまっていてツライ。ツラすぎる。
「通読して遺志の重さの過酷さに思いを馳せよう。」
もうそんな感じ。

編者である金森修さんの著述いろいろ
→●本『エンハンスメント論争 身体・精神の増強と先端科学技術』
→●本『負の生命論 認識という名の罪』
→●本『現代科学論 科学をとらえ直そう』
→●本『科学的思考の考古学』
→●本『サイエンス・ウォーズ』





 →『ミニ特集:科学をめぐる科学の本 海外』
 →『ミニ特集:科学史・科学の科学の本 海外 その1』
 →『ミニ特集:科学史・科学の科学の本 海外 その2』
 →『ミニ特集:科学史と科学を語る本 日本 その1』
 →『ミニ特集:科学史と科学を語る本 日本 その2』
 



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