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科学な本のご紹介:  あなたは実は二人です:本人も知らないキメラ

科学に佇む書斎
【2015/10/30】

以下は、昔々の2006年に、旧ブログに記した稿を復刻したものです。






一つの身体に、部分によって遺伝子の違う細胞が存在する人間は、実在する。
●2002年5月

一人でありながら二人
2002/05 Nature News Service Human genetics: Dual identities
二卵性双生児になるはずが、二人分の組織が胎内で融合・合体して、キメラ状態の一人となって誕生してしまう
両性の性器を持ち、身体の部位によって遺伝子が男だったり女だったりする

「キメラ」とは、元はギリシャ神話に出てくる伝説の怪物「キマイラ」に由来する呼称です。日本の妖怪「鵺(ぬえ)」みたいな、いろんな動物の寄せ集めみたいな体をしている怪物が、「キマイラ」。

ドラクエに出てくる「キメラ」も、このへんが元ネタです。



生物学では、一つの身体の中に複数の遺伝子タイプの細胞が混在している状態を指して、キメラ (chimera) と呼んでいるのですね。
キメラのリンク Wikipediaで見るキメラの説明

〓人間のキメラ症例〓

●2003年11月

50歳を過ぎて初めて知る事実 「あなたはキメラ」
2003/11 BBC News When two became one in the womb
二卵性双生児が胎内で融合して生まれた女性
一人でありながら二人ぶんの組織の混ぜ合わせだったのだ
 tetragametic chimera
これまでに知られている事例は30例だけだが、実際にはもっと多く存在しただろう


複数の赤ちゃんを身ごもった場合(多胎:双子、三つ子…)、それらの胚(赤ちゃんのモト)が、妊娠中に融合したり、細胞を交換して混ざってしまったりすることは珍しくない。

・複数の胚が合体&モザイク状態になって、一人の人間として生まれてくる
・複数の胚の間で一部の細胞を交換したりまぜこぜになったり

体の部分部分で、Aちゃんの細胞だったりBちゃんの細胞だったりして生まれてくる。

そのまぜこぜの組み合わせが悪ければ、生きて出て来ることはなく流産・死産で終わってしまう。
が、モトは正常な組織の合体なわけで、組み合わせの運が良ければ、キメラっ子さんは、けっこうふつうに生まれてお育ちになってしまったりする。

中には上掲の例のように、部分ごとに男の遺伝子だったり女の遺伝子だったり。それでも普通に一人の人間として成り立ってしまう。

双子の兄弟が、お互いにお互いの細胞組織のツギハギでできあがっている。
一人の個人が、双子ぶんの細胞のまぜこぜで誕生する。
一人の個人に、流産でこの世を去った見知らぬ兄弟の細胞が混ざり込んでいた…

      angel

これは絵空事ではなく、本人も気づかぬままに、実在する。
親も、本人も、多くはその事実を知らぬまま育つのであり、下手をするとその事実を本人も誰も知らぬまま、一生を終えていくのであり。

たまたま、
  ・臓器移植の必要に迫られて、検査をしたらびっくり
  ・妙な症状があらわれて、検査をしたらびっくり
それでおのれのからだの秘密を知ることになった。

 そうすると、それそこの、実は…? m9( °o°)

〓人間のキメラ症例〓

4年後:

●2007年01月24日 21時台、テレビを見ながら追記:
:いまやってる世界仰天ニュース、これキメラ例のことじゃないかと推察しながら見ているんだが、ふむ、2006年3月の例ね。

●母親の卵巣だけ違う遺伝子DNAスペシャル:疑惑のDNA鑑定『ザ!世界仰天ニュース』 日本テレビ



●血液混じる双子
「生まれた子のDNAが、母親が生むはずのない型だった! どこかで子どもの取り違えが起きたのか!? 母親は全くそのようなことをいわれる覚えはない! 検査をしてみると、母親の卵巣部分だけが「違う遺伝子の組織だった」!!

身体の各部の遺伝子検査をして始めて、母親の特殊体質がわかり、疑いも晴れ、一家は安心して幸せに・・・

しかし。
ちょっとこれ、よく考えてみよう。

●【女性がキメラで、卵巣部分が遺伝子が違った】場合。
子どものDNAが父とはつながるが、母とは「血のつながりがない」と宣告される。これはまだいい。
お母さんが産んだ子どもが「お母さんの子じゃない」となるわけで、誰がどう考えてもおかしい事態だとわかるもんね。「彼女が生んだ子なのになぜ!?異常だ!」と、普通に「詳しく調べてみよう!」という気にもなるよね。

ところが、

●【男性がキメラで、睾丸部分が遺伝子が違った】場合はどうだ?
子どものDNAが、母とはつながるが、父とは「血のつながりがない」場合、これは…

「母さんが浮気をしたんだ!」ですまされてしまわないか?!
この場合、誰が「父さんの睾丸がおかしいんだ!」などと発想できましょうか!
母親は浮気の冤罪(えんざい)をなすりつけられたまま、父親のキメラ例は一生あきらかにならぬまま、で終わってしまう…!? gakbul

〓父親のDNAキメラ〓

この箇所へのリンク【その後の記事 追記】

■2007年04月
読売新聞 不妊治療で出産、双子8組の血中に男女の性染色体が混在
2003〜06年 同性で血液型が混在する双子も
毎日新聞 体外受精:妊娠異常が高率で発生 前置胎盤、通常の5.4倍 聖路加国際病院調査
共同通信 体外受精、妊娠異常多い 医師らが調査

さらに追記
もっと前にもこんな記事があった:
■2004年09月
共同通信 双子に血液混じる異常 不妊治療がリスク高める?
 二卵性なのに一つの胎盤を共有

-=-=-=-=-=-=-=-=

2011/10 追記:このキメラ現象は、男性より女性のほうがはるかに発生率が高いとのこと。
 (もしくは男性では、成長できずに死ぬ事例が多いのか)






以上、2006年初稿となるブログ記事の復刻でした。

そして、ほぼ10年後にして、【男性がキメラで、睾丸部分が遺伝子が違った】実例が報道された。
●2015年10月
リンク夫の精子で出来た子が夫の子でなかったという珍事が米国で発生
 ┗ 父親の精子を用いて人工授精で生まれた子の遺伝子が、父親の遺伝子と違っていた! これはさすがにどう考えても母親の浮気のせいじゃないわけで「医療ミスじゃないか!?」と確認に走ったところ、検査結果は「父親が睾丸だけ別人だった」😫

結論: 男性キメラは、女性のケースよりは発生率は低いが、実在しうる。

ちゃんとした父さんの子で、ややこしいのは父さんの金玉のせいなのに、「母さんが浮気をしたんだ!俺の子じゃない!」と断罪され縁を切られた母子の悲しい冤罪事件は、過去いくつもあったんだろうね。






 →『ミニ特集:遺伝をめぐる科学の本』
 →『ミニ特集:遺伝の研究成果を語る本』
 →『ミニ特集:遺伝の科学エピジェネティクス本をめぐる本』

 



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