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科学な本のご紹介:  プシコ ナウティカ イタリア精神医療の人類学

科学に佇む書斎
【2014/08/04】



イタリア『プシコ ナウティカ イタリア精神医療の人類学』

医療と患者の関係をめぐる「自己効力感 自分には何かできる感」の研究は、日本ではめちゃくそ研究の余地がありすぎる。

自分はどのような行動を取れば、どんな選択肢を選べば、「状況が改善する」と思えるのか。
「自己効力感 自分には何かできる感」は、文化的に刷り込まれるものであり、実際の実効とは乖離して作動し続ける。
そして、ヒトは「自己効力感」を失う(自分にはなにもできないという感覚に陥る)と、希望を絶たれ、苦しむことになる。

科学の本イタリアの精神保健の有名なモットーに、「近づいてみれば誰一人まともな人はいない(Da vicino nessuno è normale)」という言葉がある。

科学の本1978年に法律180号が成立し、この法律を契機として精神病院が開放されることになったという。1999年には最終的にイタリア全土の公立精神病院がすべて閉鎖されていた。

科学の本病気と社会的排除という二重の現実。精神的疎外と社会的疎外という二重の疎外。だからこそ、精神医療にたずさわる者は、医学的な次元と社会的な次元という二つの次元で闘わなければならない。

科学の本生活に真の変化をもたらし、人生を選択できるようになるためには、現実的な能力や技能が必要である。こうした「現実的な能力や技能」を私たちは子供の頃からどれほど磨いてきただろうか。
 精神保健センターの仕事は、そのような「現実的な能力や技能」に関わるものである。したがってそれは「真の希望」に関わる。

科学の本社会契約のなかに入り、市民としての自由を行使することは、行動の現実的な可能性を開く。
 そうした現実的な可能性こそが希望を生み出し、そのことが未来への指向のなかで日々を生きることを可能にしてくれる。それが薬の量を結果的に減らすのである。

科学の本現代において、人は空想やあるいは妄想についてはたやすくもてるかもしれないが、本物の希望をもつことは難しい。

科学の本 現代はとりわけ労働が、多くの場合、経験を深めていけるような類いのものではなくなっている。
 「自己効力感 なにかできる・やれる感」を得られるような活動や環境から切り離されたときには、人は〈主体〉であることも、「人間」であることも難しくなる。

科学の本病者を治すのではなく、社会を治すのである。それも、精神科医が精神病院で病者を治すのではなく、社会が自らを治すのである。



 


『プシコナウティカ イタリア精神医療の人類学』
 松嶋健
 世界思想社
 


なぜか、精神病患者を病棟に隔離しまくる日本。
対象的に、イタリアの精神医療は、バザーリアというスゴ改革者さんが登場したおかげで、患者を隔離病棟から開放!できた。
地域社会に、自由に生きる精神病患者さんたち。

そのベースには、
「病者も犯罪者も貧者も、この世で試されている。ほかならぬ健常者も、この世で試されている。
 厳しい<この世チャレンジ>を課せられた弱者をサポートすることによって、健常者もより高い<この世チャレンジ>のステージに上ることができる」
という一神教由来の世界観がある。

日本は、
「病者も犯罪者も貧者もいなければ、自分がラクになる」
という非常に視野の狭い「状況が改善する」感を刷り込まれている層が多い。弱者や他者を排除して効率的な人間だけのツルンとした社会になれば成就がもたらされるのだ、と見做す錯誤が蔓延している。

ここはひとつよく考えてみよう。
「規格を満たす人間だけの社会が幸福だ」と見做す文化的刷り込みと、
「規格に入れず苦しむ人間を支えて救うと社会が幸福になる」と見做す文化的刷り込みと、
どっちが実際に状況を改善できるのか。
うん、ここはひとつよく考えてみよう。やれるか、やれないか以前に、こんなやり方もあるんだ!という学び。

本書は、ちょい難しめの本です。厚いです。なんぼか予備知識と読破力が要ります。
この本は→『2015年拝読本のベスト』に入ります。

イタリアの弱者包摂規範については、
→●本『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦』 浜井浩一
●本『イタリア精神医療への道 バザーリアがみた夢のゆくえ』レンツォ・デ・ステファニ, ヤコポ・トマージ
リンク渡邊芳之先生ynabe39の「精神科医療について日本とヨーロッパの現状はびっくりするほど異なる。」 とぅぎゃり2015/08
などもご参照ください。
浜井さんの本『罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦』を先に読んでおいたほうが、この本はピンとくるかもしれない。


 →『ミニ特集:心の健康と生き方の本』
 →『ミニ特集:心の病について入門する本 患者側』
 →『ミニ特集:心の健康をめぐる本 パート1』
 →『ミニ特集:心の健康をめぐる本 パート2』
 



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