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科学な本のご紹介:  音楽を習うと人生どのくらいお得度合いが向上するか

科学に佇む書斎
【2015/07/21】

2012年3月に記した 旧ブログの記事 の、一部抜粋復刻です。



音楽の科学シリーズ、今回は 五感の科学の科学記事庫 から、
 「音楽と脳力」「音楽習得と学業成績」
がらみの記事を並べていきます。

 「音楽をやっていると、なにやかにやと人生オトクである」的な、ポジティブな結果の記事ばかりになってますが、これは偏るように選び拾ったものではありません。
 「音楽習得と認知能力の増減に相関はあるか」についての記事を単純に拾っていくと、のきなみポジティブな「いいことがあるんだよ」報告ばかりで、「音楽を習うとこんな悪いことがある」てなネガティブ報告は見当たらなかったのです。

〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓

■ 音楽を習うと頭の良さが変わる?

 時系列に並べます。
 ほぼ毎年、各国のさまざまな研究者によって毎度やっぱりやっぱりと効果が確認されています。
●香港
音楽のレッスン、お子さんの言語記憶力を高めます
 〜香港
2003/07 BBC News Music 'makes the brain learn better'
2003/07 EurekAlert Music instruction aids verbal memory
トレーニングが長ければ長いほど、言語記憶の成績も良くなった
言語学習能力は音楽教育の持続時間に比例して上昇
ちなみに、視覚記憶への効果は見られなかった

●カナダ音楽の才能と数学の才能、関係ありますか? 〜カナダ
 学年中に毎週ピアノや歌のレッスンを受けた6歳の子は、知能指数の伸びが普通より大きめの平均7.0ポイントを記録した
 効果は小さいものだけれど、抽象的な情報やパターンの把握が上手になるからかな
2004/06 Science News, Vol. 165, No. 25, p. 389 Tuning Up Young Minds: Music lessons give kids a small IQ advantage
 演劇のレッスンを受けた子と、とくに課外レッスンはやらなかった子は、知能指数は普通の上昇率の4.3ポイント増でした
2004/08 American Psychological Society First solid evidence that the study of music promotes intellectual development
 演劇のレッスンを受けた子は、社交能力、人間関係のスキルで上達を示した

●アメリカ音楽の習い事はいろいろお得な効果をもたらします
 〜アメリカ・ハーバード大
2008/11 EurekAlert Research shows that time invested in practicing pays off for young musicians
 普通に学校で毎週一時限の音楽の授業を受けていた子と、授業に加えて毎週45分の演奏レッスンに通い、自宅でも練習を積んでいた子を比較
 楽器の演奏を習った子は、音の識別能力や手指の器用さだけでなく、言語能力や視覚能力もよく伸びていた

●イギリス音楽の練習は、お子さんの言葉の能力をお助けできます 〜イギリス
2009/03 EurekAlert Music tuition can help children improve reading skills
 鍵盤楽器演奏のレッスンに通った小学校低学年、語彙量も文章力もアップ.

●アメリカ音楽がなにかと良い理由 〜アメリカ・ネイチャー誌
2010/07 news@nature.com Why music is good for you
 音楽の脳内処理は、音楽専用回路だけではなく、いろんな脳の認識機能回路も活用するんです
 音楽を練習すれば、声に含まれる感情とか、言葉の機微とか、よくわかるようになるし
 音楽は心の訓練手段として注目されすべきだし、研究されるべきだと思う
 音楽は、社交生活と暮らしを豊かにし、人間の可能性を高めてくれるんだ

●アメリカ音楽の才能を発揮するには、練習量だけじゃなくワーキングメモリのキャパもそれなりに必要になるらしい 〜アメリカ
2010/07 EurekAlert Musical skill reflects working memory capacity in addition to practice time
 音楽的技能は、練習時間に加えてワーキングメモリの容量も反映します。

●アメリカ音楽がデキる子は読み書きも上手 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2011/10 EurekAlert Musical aptitude relates to reading ability
音楽の素質は読字能力と相関します。
 聴力ワーキングメモリと音楽の素質と読字能力のつながりに見る生物学的基盤
 音の一時記憶と集中力は、音楽の能力に重要です。
(例えば、課題を実行しながら指示を聞いて、後でその指示を思い出さなきゃならない、そんな作業が繰り返されるんだよね)
 そのような能力は、児童の言語記憶や読み書き能力にもやはり重要です。

 一部でよく言われる、「言語はヒト進化上音楽から発達したものだ(鳴鳥のさえずりやメイティングコールからの類推)」という話は殆ど出てきません。
●ドイツ音楽の演奏は、脳内の複数の知覚処理機能を微調整してくれる
 〜ドイツ マックス・プランク研究所
2011/11 Playing music alters the processing of multiple sensory stimuli in the brain
 ピアノの練習で、脳内の感覚信号処理が時間的に微調整される.

 音楽のレッスンによって言語能力に良い効果がある点にしても、「ほら言語は音楽から進化したし」ではなく、
 情報処理機能が向上して、音楽以外の能力にも良い効果が出るのだ
という話で通っています。

〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓

■ 育ち盛りの脳には音楽は栄養だ

●カナダ音楽のトレーニングが、幼児の脳発育に影響を及ぼすという最初の証拠 〜カナダ
2006/09 EurekAlert First evidence that musical training affects brain development in young children
2006/09 BBC News Music training boosts the brain
 音楽教室スズキ・メソードに通ったお子さんたち
 音楽のレッスンを受けた4〜6才児の脳は、音楽教育を受けない子とは異なる発達ぐあいを見せていますよ

 生育過程にある脳は、受けた訓練なりの強い回路を形成していきます。
 けいこをすれば、そのぶん能力の高い脳になる。
 脳の良い訓練になっているんですね。

 幼い時から本を読み慣れているといろいろオトクだよ、という話は以前紹介いたしました。
→ 『 読書で成績が上がる 』
 ┗ 幼いうちから本読みに親しむと、読みが得意な脳回路がしっかりできあがる

 同様に、音楽に親しむ育ち方をすると、そのぶん能力もついてくる。

 国語の成績とか認知能力とか以上に、
  「音楽のレッスンを受けていた子は人間関係が良好になる」
という報告も出ています。
 人間関係が良くなれば、当然そのぶんモテもするだろうし、そも「感情の察知」が上手になるらしいんですね。感情を敏感に感じ取れるようになれば、それは人間関係も良くなるでしょう。




 感情の察知には、「声色」がたいへん重要な役割を果たします。
 「声色」の機微が感じ取れなければ、そのぶん「相手の感情を害してしまう」頻度も高まってしまうでしょう。

 声に含まれる感情の察知、これは相手の声から感情を聞きとる能力だけでなく、「自分が発する声の感じ」を調整する能力にも関わってきます。
 相手の感情を察知するアンテナがにぶっている人の場合、自分の声が持つ感情のニュアンスについても、他の人より鈍感だったりするんですね。

 だから。

 アスペルガーの人は、一方的な怒涛の棒読みのような話し方をしがちだったりする。
 自分の声が持つ感情のニュアンスが察知できていない。その結果。
 なのでしょう。

〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓

■ 音楽を習うと、人の言いたいことがよくわかるようになる

● 錯綜する音の中から、特定の音を拾い出すのがうまくなる
● 雑多な音の中から「言語音」を拾うのがうまくなるらしい
●アメリカ2010/02 【日本語記事】National Geographic 脳の言語処理、音楽で改善
 カラオケ好きからプロのチェロ奏者まで、
 音楽愛好家は騒音の中でも必要な音(相手の会話とか)を聞きとるのが上手
 〜アメリカ・サンディエゴの神経科学研究所

●アメリカ騒がしいパーティーでも、音楽にたけた脳なら無問題
 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2009/11 New Scientist Noisy parties no problem for musical brains
 楽器の演奏が、会話の感情的な手がかりを拾う能力を高めるらしい

●アメリカ音楽のご利益
 楽器の演奏は、言語音に対する脳幹の感度をかなり増強する
 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2007/03 EurekAlert Research finds music training 'tunes' human auditory system
 音楽トレーニングで言語に対するヒト聴覚システムをグレードアップ

● 声に含まれる感情を拾うのが上手になる
●アメリカ音楽家は、音に含まれる感情効果に敏感
 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2009/03 EurekAlert Musicians have biological advantage in identifying emotion in sound
 音楽のトレーニングは、音が表現する感情を感じ取る能力を強化する
 ミュージシャンと素人さんとで、3つの音響関連量(ピッチ、タイミング、音色)の脳幹処理を測定してみました
 「音楽的経験と神経の効率:声の感情表現を処理する脳皮質下へのトレーニングの効果」

●アメリカ音楽で仲よく 〜アメリカ
 音楽の学業成績への効果は、特に高校時代にプラスに出ますね。
2009/02 EurekAlert Adolescents involved with music do better in school
 音楽活動をしているティーンエージャーは、学校生活をうまくやる
 幼児期〜思春期に音楽を習ったり、親御さんとコンサートに行ったりしていた子は社交性が高め
 低所得者層と、ヒスパニック系は、あまり音楽に親しむ機会がないようですが

 名曲コンサートとか、足を運んだことはありますか?
 幼いときに連れていってもらったおぼえはありますか?
 (あるという人と、ないという人で、大きく分かれそうだな・・・)

 「低所得者層では、子供の成績を向上させる生活習慣が乏しい」という各種報告についても、以前紹介いたしました。

〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓     〓演奏家、児童の音楽教育〓

■ 大人になっても演奏推奨

 音楽を習うといろんな能力が伸びるのは、幼いときに限ったことではございません。
 大人になってからでも、年老いてからでも、プラスの効果がいろいろあります。
●アメリカ音楽的な経験は、加齢効果をなんぼか相殺してくれる
 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2011/05 EurekAlert Musical experience offsets some aging effects
 音楽教育は学生の成績をアップさせる
 音楽のレッスンは高齢者にも若返りの効果を与える
 非ミュージシャンの高齢者と比べて、高齢のミュージシャンは騒音の中の会話の聞き取りと、聴覚記憶で優れている。

●アメリカ音楽教育は加齢の過程に生物学的インパクトを持っています。
 〜アメリカ Nina Krausのチーム
2012/01 Music training has biological impact on aging process
 加齢でヨボヨボしていくのは、避けられないものではなく、音楽教育で避けうるか、または相殺できます
 長年の音楽経験には、老化を減らす効果があるという生物学的証拠
 若人と高齢のミュージシャン、そして若人と高齢の非ミュージシャン、4グループを比較検査
 音への自動脳反応を見てみたところ、高齢のミュージシャンは、音楽をやってない若者より素早く正確なんですよ

 演奏は、身体の機能面に良い効果があるだけでなく、心の健康にも良い効果があります。
 ある意味、「感情の体操」みたいなものかもしれない。
 心の中の感情を、ストレッチさせたり、駆け足させたり、腹筋させたりして、心の健康度を向上させてくれる。
音楽で、より賢く
2009/10 EurekAlert Music makes you smarter
 定期的な楽器の演奏は、脳の構造と機能を変える
 記憶力向上、認知能力向上、言語能力向上、さらには気分障害の改善を目指す療法にも使えるかもしれません

 音楽療法で健康度が向上する、的な話は別項でまとめて紹介いたしました。

音階・メロディと聴覚


 さて。
 上にいろいろあげた報告の中、多く混じっているのはアメリカのニーナ・クラウス(Nina Kraus)という研究者さんからの報告です。この人は、かねてより音楽と脳力についての研究を重ねてきているらしい。

聴覚系神経科学研究室
 Principal Investigator: Nina Kraus, Ph.D.
 リンク Auditory Neuroscience Laboratory

SMPC 2011 Keynote: Nina Kraus Part 1 - YouTube
Society of Music Perception and Cognition 2011 Conference - August 11th, 2011

 音楽のレッスンは、これすなわち「心の窓の訓練」。
 「進学には関係ないから」などと偏った勉強ばかりしていると、心の栄養も偏ってしまいかねない。
 音楽は、脳内のいろいろな回路の結びつきを調整してくれる、たいへん気のきいたアートなのです。
神経科学者ニーナ・クラウス
 学校の音楽の授業は減らさないで 〜 Nina Kraus
2010/02 EurekAlert Neuroscientist: Think twice about cutting music in schools
 音楽と言語能力との関係
 音楽のレッスンをやっている子は、騒がしい教室でもちゃんと必要なお話を聴き取れる
 人の声に込められた微妙なニュアンスを感じ取るのも上手になる


音階・メロディと聴覚


この箇所へのリンク【その後の関連記事 追記】
合奏する子、共感力アップ
2012/06 Music of kindness: Playing together strengthens empathy in children

幼い頃に音楽を習った経験があれば、成長後も音感が良好
2012/08 A Little Goes a Long Way: How the Adult Brain Is Shaped by Musical Training in Childhood

音楽は語学習得の基礎となります。
2012/09 Theory: Music underlies language acquisition
 音楽のレッスンは言語を習得する能力を高める

幼いときの音楽のレッスンは脳の発達を向上させる。
2013/02 Early music lessons boost brain development
 運動野が伸びる:身体動作の計画と調整





 以上、旧ブログ2012年の記事から一部抜粋復刻でした。 

    
 
 →『ミニ特集:五感研究の本いろいろ』
 →『ミニ特集:音の科学や聴覚を語る本』
 →『ミニ特集:聴覚障害を語る本』
 



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