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科学な本のご紹介:  うつの医療人類学

科学に佇む書斎
【2014/09/24】



うつの医療人類学180『うつの医療人類学』

年間拝読ベスト本入り。

国によって、文化によって、ヒトの逆境反応はどのようにあらわれてくるのか。そんな→『文化依存症候群』の系譜で、日本の精神医療とうつ病概念の推移を読み解く話題の書。

科学の本日本の精神科臨床は、個人の心理的葛藤にのみ焦点を当てるのでもなく、またバイオロジカルな脳疾患としてのみ語るのでもなく、鬱を社会的なストレスの病として位置づけるところが特徴的だ。

科学の本近代科学で訓練された人々は、医学的に認識され、正当性をもった「疾病」を確立することに忙しく、その過程で容易に診断名のつかない「不定愁訴」が正当な分類からこぼれおちていった可能性が考えられる。

科学の本前近代においては、苦しみの存在を前提に、苦しみとどう生きていくか、苦しみにどう意味を見出していくかという宗教的問いが重要とされた。
 近代に入ると、苦しみそのものを根絶する技術としての科学が台頭する一方、精神病の歴史に見られるように、根絶しようとする努力やその志向性自体が、苦しみを抱える人を時に追い詰めてしまう結果をも生み出してきた。

科学の本うつ病の自助グループに長年かかわっている医師が指摘したように、精神障害は「疾病であり、性格であり、生き方であり、対人関係であり、社会病理でもある」のだ。

科学の本伝統的に神経の概念をもたず、脳を重要な器官とみなさなかった当時の日本人にとっては、近代神経学的精神医学のデプレッション概念はまったく新しい身体観を示すものだったに違いない。








『うつの医療人類学』
 北中淳子
 日本評論社
 


マーガレット・ロック賞やアメリカ文化人類学会の Hsu Book Prize を受賞するなど、先に海外で広く知られた「日本におけるうつ概念の推移」研究が、ようやく日本語の単著として登場。
この本は、ぜひ、ぜひ、
→●本『クレイジー・ライク・アメリカ』 イーサン・ウォッターズ
と読み合わせて欲しい。
北中さんの『うつの医療人類学』は上品マイルドな状況見渡し系。
アメリカ人ジャーナリストの著作『クレイジー・ライク・アメリカ』は問題点あげつらいの尖り系。

もとより→『文化心理学』でもかねがね指摘されているように、日本の思考ではさまざまな要因を勘案したがるし、アメリカの思考では特定の物事に焦点し単純化する傾向がある。
この「国際的に見たうつ病概念」問題については、そういう2つの姿勢から、それぞれの視点で逆照射し立体的に相補的に見たほうが、より事態が把握しやすくなる。

なお、これ医学の本じゃなくて_医療人類学_なのであって、「私のうつはどうやれば治るの」的な期待で読まれても困ります。頼む。






この北中淳子さんの論は、社会学系の別の論点を提示している
→●本『自殺の歴史社会学』
と読み合わせると「うつの意味」についてまた違った様相が見えてきて社会の見え方が深まります。

北中淳子さんの稿はこちらでも読めます。
→●本『生き延びること 生命の教養学V』 北中淳子

 →『ミニ特集:文化依存症候群を考える本』
 →『ミニ特集:医療人類学』
 →『ミニ特集:医療人類学 2』
 →『ミニ特集:医学で歴史を温故知新する本』

 



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