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科学な本のご紹介:  我が一家全員死刑 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記

科学に佇む書斎
【2014/12/14】



赤ドクロ『我が一家全員死刑 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』

▶人間は、首を絞めて息絶えた、と思われても、しばらくすると息を吹き返すことがある。

▶人間は、銃で頭を撃たれても、さらに心臓を撃たれても、まだ生きていることがある。

▶人間は、「おまえを殺すから首を出せ」と言われて素直に従い殺されることがある。

▶人間は、「善い人であろう」として殺人をおかすことがある。

▶人間は、さまざまな壊れ方をする・・・



 内容は、マジ、殺人実行犯が記した、リアル手記である。
 契約上、手記の内容にはほとんど手を入れない状態で出版せねばならないという縛りのもとに、公開された。

 当初の公開形態は、『実話マッドマックス』(2008年8月号〜2010年1月号)に『我が人殺し半生』として連載されたものであるらしい。筆者の鈴木智彦氏は、ほかのライターがお役を断ったその後継として任を受け、連載を担当している。
 たしかに、この連載を名を冠して担当するとなると、これはかなり肝を据えてかからなければならないヤバい山であるわけで、随所に鈴木智彦氏による解説や評が挿まれるのだが、それが「読んでいて無理感が強い」ものになっている。

・これでは、連載に対して手記の筆者(犯人)からの強い抗議があるのは無理もない。
・解説が、説得力も後回しの力業。緊急避難的な、拙即な虚勢の張りようで浅薄すぎないか。
・このライターはフィールドワーカーには向いてないな。
・この程度で引き受けたとは、逆にいえば度胸に恐れ入る。。。

 というような感想を抱いてしまう。が、このような状態にならざるを得なかった部分を、鈴木智彦氏はあとがきで冷静に分析し反省を語っている。

【あとがきより】
 この本に価値があるとすれば、すべては北村の手記部分にある。解説は明らかに偏向しているからだ。
 当初、可能な限り客観的に書こうと考えたのだが、北村の手記にまったく謝罪の言葉がないので、事実だけを並べると殺人賛歌という印象を受けてしまう。
 バランスを考えると、どうしても犯人の北村家を感情的に非難する言葉が並んでしまった。が、極悪、非道、悪逆、無道、凶悪、残酷、残虐、鬼畜、殺人鬼、人でなし……どこから読んでも結論は一緒で、罵詈雑言の限りを尽くしても、最後には言葉が尽きる。かといって被害者遺族の心情を考えると、茶化すわけにはいかない。不用意な言葉は選べない。


 ここに尽きる。
 できれば、このくだりは「まえがき」で記しておいて欲しかった。この心構えがあれば、読み進める過程での鈴木智彦氏のコメント部分に対する印象はだいぶ異なってくるから。

〓大牟田一家4人殺害事件〓

 犯人は、一家4人ぐるみで、人間を一気に4人殺している。
 犯人一家は、父、母、長男、次男。
 実行犯は、ほぼ次男一人。というか、この証言の中では、兄も、親も、次男一人に手を下させている。

 手記の筆者は、実行犯の次男。
 次男は、家族に忠実であろうとして、手を下している(という形になっている)。
 そして、結果は、一家4人全員、死刑。

 事件の概要はウィキにも上がっている。

リンク 大牟田一家4人殺害事件
 2004年9月に福岡県大牟田市で発生した強盗殺人死体遺棄事件。
 被疑者である家族4名全員に死刑判決が下った特異な事例である。
 裁判で父親は一人でやったと主張。母親は自分は従属的だったと主張。だが、一審・二審共に実行犯でなくとも主導したのは母親であったと認定している。


 本書に収録されているのは、次男の手記であり、次男は自分がすべて手を下したと述べた上、ライターの鈴木智彦氏に対して〈自分のことは何を書いてもかまわないが、共犯の両親と兄のことは書かないように。また面会も禁止する〉との縛りをかけている。
 そのへんからして、本書で次男が述べる「誰が何をしたかの事件の詳細」については、次男が家族をかばう話を作って公開した、と疑うことも可能なわけで、そこもあらかじめ頭に置いて読まれたい。

〓大牟田一家4人殺害事件〓

●絞殺 拳銃自殺
 しかし、ここに記されているビビッドな「殺しのリアル」にはまいった。

●首を絞めて、息絶えたと思って目を離したら、しばらくして意識がないまま息を吹き返した!
●首を絞め直して、「ここまでやれば確実に死んだな」と思える閾値を体得した。



 曰く、眼や耳から血が溢れてくる…

●短銃を出した初対面の相手に「頭を出せ」と言われて、素直に頭を出してそのまま撃たれる被害者。
 彼はたまたま居合わせただけの「ターゲットの友人」だった。「いっしょに殺しちまえ!」
●でまた、それが口径が小さい銃だったからか、頭を撃っても、意識を失った肉体はまだ呼吸して生きているときたもんだ!
 さらにトドメを刺そうとして心臓に向けて弾を打ち込んでも、まだ生きている!



 脳卒中で、すごいいびきをかきながら昏睡している、それと酷似した状態を呈している。
 ふと、「即死」の基準について思いをめぐらしてしまう。
 人間は「絶対生き延びられない」負傷を負っても、しばらくは生きて、それから避けようもなく、確実に死んでいくんだよね。脳に致命的なダメージを食らっていても、数時間、数日は、意識のないまま生体活動が続いてしまうことはままある。
 生きていながら、「もう死んでいる」の意味。

 アメリカでは、「銃できれいに脳死になったケース」が多く、それらはとても臓器移植に適しているのだよ、てなことまで想起してしまう・・・。

●犯人一家の父親は、任意出頭での取調べ中に、大牟田署内で短銃で自分の頭を撃ち自殺をはかった。
 『弾丸は頭蓋骨をぐるりとまわった後に額で停止し、命に別状はなかった。』



 用いたのは25口径。直径6mmちょいの、ごく小さな弾の銃ということになる。
 前述の「頭を撃っても心臓を撃っても死なない」はめになった銃も、このクラスだったんだろうな…。
 タマは「頭蓋骨をぐるりとまわった後に額で停止」ですよ! 父親はいくら「命に別状はなかった」としても、そうとうの重度な高次脳機能障害(記憶障害なり深刻な性格障害なり)負っているんじゃないですか。まだ警察病院だかに収監されているというし…。suji

〓我が一家全員死刑 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記〓

●この手記の意図:

 すべての実行を担ったと手記で主張する次男は、家族に対する、特に両親に対する忠誠心や思いやりを溢れさせる。
 一方で、ズルイ兄に対してはその旨反感を明記している。といっても、本書のライターの鈴木智彦氏に対しては〈自分のことは何を書いてもかまわないが、共犯の両親と兄のことは書かないように。また面会も禁止する〉と、兄も含めておそらく「かばって」いる。

 また、この次男の文面は、かなり淡々と読みやすく、難しい言い回しもこなしていて、単なるオカシナシャブ中と切って捨てるにはいかない何かを感じさせる。
 両親は、外道のヤクザとしてのシノギがうまくいかなくなり、追い詰められていた、がゆえに、金目当ての犯行に一家が走ってしまった。

 これしかない世界、視野狭窄、状況破綻…
 これは一種、フォリー・ア・ファミユ(家族精神病 Folie en famille)に近いかもしれない。相互依存している家族が、状況に追い詰められた末に、妄想を共有して暴走してしまうという…
 フォリー・ア・ファミユ Folie en famille(家族精神病)
 Folie en famille → フォリー・ア・ファミユ

 鍵としての兄、兄のポジションが気になる。
 兄(一家の長男)は、過去に殺人を犯したことがあり、未成年であったがゆえに軽い刑で済んでいる。その殺人犯である兄の、内面フォローが破綻していたことが事件の悪化に強く作用しているのかもしれない。まあ、どっちにしろ、この家族では、適切な心的フォローはちょっと期待しようもないのではあるけれど。
 「長男は未成年で殺人を行い軽い刑で済んだ。次男はまだ未成年だから、手を下しても刑罰は軽くすむ」という計算があったと見られているが…

【あとがきより 鈴木智彦】

 本当に書きたかったことは、また別にあった。
 北村家の中で犯罪とまったく無関係だった家族のことだ。
 彼らは凶悪殺人犯の身内として、私がここに書いたことと同じような罵詈雑言を浴びせられ、言われなき差別に直面している。批判されるのはあくまで実行犯の四人であって、他の家族は一種の被害者である。その他、いくつか書けなかったことがあったが、いつかなんらかの形で世の中に残しておきたいと思う。ただ、北村家の死刑が執行され、当人たちがこの世から消えた後、好き勝手に振る舞おうと思っているわけではない。

 また、死刑囚は刑の執行そのものが刑罰となる。
 死刑のその瞬間……自分の命を奪われることだけが彼らの刑だ。そのため懲役となった人間に比較し、刑の執行まではかなりの自由がある。反面、労役がないため、金を稼ぐ手段がない。家族同士の手紙のやりとりにも、便せん、封筒、切手代がかかり、金がなければ何もできない。北村が手記を書いたのは、自分の考えを世の中に残そうとしたわけでなかった。あくまでもっと現実的な理由で執筆を始めたのだ。


参照 鈴木伸元 著 →●本『加害者家族』
 ┗ 日本は、犯人の親戚縁者までタコ殴りにする野蛮な風土。

〓大牟田一家4人殺害事件〓

 とにかく、異常でありながら、本書はその世界なりに(?)筋が通ってしまっているわけで(破綻している部分も多いが)、実際にこの衝撃の手記内容を読んでいただいてから、「これはいったい何であるのか」各自なりに受け止め方を考えていただきたい、…いただくべき手記なのだろう。簡単に飲み込むべきではない大玉だ。

 まずは、この「殺しのリアル」の衝撃をくぐってみてくださいまし。

以上、2011年に、単行本版について旧ブログに書いた読書感想稿の抜粋。
偏向した意図をベースに出版されたものなので、本書の意図解釈については軽々に断定できないことと、身体の死後変化あれこれについて連投していた当時に記したものなので、わざと焦点を致死損傷のほうにふっています。


あまりの反響に、新書版も出ています。2017年、映画化も決定。
 

『我が一家全員死刑 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』
 鈴木智彦
 コアマガジン コア新書
 








 →『ミニ特集:犯罪を考える本 日本』
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 →『ミニ特集:日本の罪と罰についての本 2』
 →『ミニ特集:死刑についての本 いろいろ列挙』
 →『ミニ特集:犯罪をめぐる心の研究の本』
 



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