このサイトの中を     2016年選り抜き10冊     2015年選り抜き20冊 

科学な本のご紹介:  ミニ特集:チベット文化の本

科学に佇む書斎
【2013/09/01】

チベット
『消されゆくチベット』
『世界史のなかの中国 文革・琉球・チベット』
『チベット人の民族意識と仏教 亡命人社会の歴史と現在』
『チベット医学 身体のとらえ方と診断・治療』
『チベット医学の真髄』
『中国はいかにチベットを侵略したか』
『チベット 危機に瀕する民族の歴史と争点』
『チベットを知るための50章』
『僧侶と哲学者 チベット仏教をめぐる対話』


『消されゆくチベット』 渡辺一枝 集英社新書

● 遊牧して暮らしていたチベット民を、中国政府が強制的に「定住」させた、その数なんと数百万人!

リンク 中国の政策で定住化するチベット人遊牧民たち、先の見えない暮らし

 チベット文化の徹底的な圧殺は広く深く進行し、昔のくらしは大きく失われた。
 もはや残るは「カネになる観光用チベット」ばかりなり。

 頓死させられる文化の悲劇。
 チベットも、ダライ・ラマも、ただただ要は「頓死ではなく自然死させてくれ」と言っているのに。



『世界史のなかの中国 文革・琉球・チベット』
 汪暉 青土社

● 中国のエリートが、中国国内向けに、中国の国際的体面について、優等生的に言説を編み上げた本。
 いろいろな意味で勉強になる内容だが、とりあえず、この本を読む上で、強く注意すべき点が多々ある。

・中国社会では、上の階層に対して批判を書けない/政府や行政に対する批判はゼロ/中国政府の方針にとって都合の良い「チベット人の声」だけ紹介している
・中国社会では、自分の立場を卑下したり自虐したりできない
・中国社会では、ヨソの文化を、中国文化の同類や亜種だとみなす錯誤が蔓延している/言語学的にチベット語と中国語は異質な言語なのだが、巷説に準じて「同類」扱いしてしまう結果、保護政策の対象とならない
・中国社会では、科学的整合性に価値を置かない。最近はようやく異国の科学的ルールに従って科学するようになってきたが、まだまだ中国的「我流」は跋扈している。
・中国社会では、「加工」したものを尊ぶ。素のままのワビサビなどには価値を置かない上、アレンジしないナマのままのものはとにかく「今風」に改造したがる。もちろんチベットほかの少数民族の古き良き伝統や文化財に対しても、「観光化」以外の価値を認めない。


 汪暉さんの本では、さまざまな問題について言及されてはいても、ハナから「古きに価値をおかない中国だからよけい悲惨なことになってんじゃないの」という点からしてまったく考慮には入らない。

 このへんをわきまえて(わきまえるのはとってもたいへんなのだ)、何がどう矯正されてこうなってしまっているのか、中国インテリの言葉の中を深く読み解いてみよう。

科学の本西洋のチベット関連知識が、彼らが有するオリエンタリズムの知の中に深くその根を下ろしている

科学の本チベットへの同情が、中国 -- なかでも、経済的に急速に台頭する一方、政治制度が極めて異なる中国 -- に対する懸念や恐怖、排斥、反感とないまぜになっている

科学の本チベット族のアイデンティティは完全にチベット仏教の上に結び付けられてしまい、チベット族社会の声の多様性はかえって埋もれてしまった。




『チベット人の民族意識と仏教 亡命人社会の歴史と現在』
 日高俊 風響社

● チベットの歴史的経緯をコンパクトに読み取れる小品。
 「チベット仏教を信仰する漢人が増えている」「チベット人側が中国との融和をはかっている」「チベットがなくなっても、チベット仏教は残るだろう」

 「チベットがなくなっても、チベット仏教は残るだろう」

 すんごい薄ペラくて700円の小冊子だけれど、これはもっと濃く読みたい。現地調査を厚く紹介してほしい。

科学の本平和的な手段にせよ、暴力的な手段にせよ、六百万の「チベット民族」が十億を超える「漢民族」に立ち向かうことは不可能に思える。そしてその数の差は現在においても、そのまま中国政府の最大の武器ともなっている。

科学の本亡命チベット人は漢人の存在を否定せず、漢人たちと対話しようとしている。そのことは、 亡命政府の出すパンフレット・書籍類に、チベット語・英語のものに次いで漢語のものが多いことによく現れている。

科学の本チベット仏教は今や漢人にも信仰され始めており、たとえ「チベット民族」が消失しても、「チベット仏教徒」、そしてチベット仏教は残るであろう。




『チベット医学 身体のとらえ方と診断・治療』
 イェシェー・ドゥンデン

● 現地側の語り。
 ネイティブ系コテコテの民俗医療というか、価値観を共有する共同体の中でこそ有効な「心の治め方」なのだ、と心して読まないと、うまく飲み込めないかもしれない、極めて異文化の香り高い濃い味わいの書物。

科学の本チベット医学では、全ての生き物は生まれながらにして病んでいると説く。病気はうつろいやすい肉体の中にすでに潜在する。つまり病んでいることこそ人間存在の根幹のありよう、生すなわち病なのだ。




『チベット医学の真髄』ラルフ・クィンラン・フォード

● 西洋人向けの「商売用に舌触りよくこんなアレンジしちゃいました!」的な勝手改変具合が・・・ううーん。
 どのくらいアレンジ&改竄されてしまっているかは、上掲のイェシェー・ドゥンデン著『チベット医学 身体のとらえ方と診断・治療』と読み合わせるとよくわかる。中国の人が「西欧人はチベットにファンタジーしすぎている」とあきれるのも無理ないかも。

科学の本チベット医学で最も尊いとされる癒しの手段は、ボーディチッタすなわち「菩提心」と呼ばれる慈悲の心です。

科学の本チベット人のあいだでは、菩提心のある医師とない医師がそれぞれ薬を処方した場合、たとえ前者の薬の質が劣っていたとしてもそちらの方がよく効くといわれます。

科学の本ちなみに喫煙は脈管を詰まらせるという理由から、チベット医学でも仏教でも禁じられています。

科学の本トゥムモの行では「怒り狂う」激しい火、精神物理学的な熱を発生させ、独立した自我があると思い込む無知な心、マリクパを追い出します。
 トゥムモの境地に達するため、チベットのヨーギはへそに種字を思い描いてそこに意識を集中させます。すると脈管(ツア)、風(ルン)、心滴(ティクレ)の作用によって、生命エネルギーであり神聖な意識であるソク・ルンが肉体を離れます。
 このエネルギーが最終的に法身(仏の体)を生み出すのです。トゥムモの習熟度を試すため、氷水に浸した布を体に巻いて乾かすということをしますが、この行をマスターした者は体の熱で何枚も次々と乾かしてしまいます。




『中国はいかにチベットを侵略したか』 マイケル・ダナム

科学の本金坑はありません。チベットでは禁じられているんです。大地のものを盗むことになるからです。でも、砂金を河から見つけるのなら構いません。河が勝手に大地から拾ってきたんですからね。

科学の本私たちは仏教徒として動物を殺しませんが、肉食獣が鹿や山羊を殺し、その屍体の上を舞う禿鷹が見えたら、何もかもほっぽり出して駆けつけます。肉は村じゅうで分け合います。




『チベット 危機に瀕する民族の歴史と争点』
 クロード・B.ルヴァンソン 文庫クセジュ 白水社

科学の本チベット人は、大規模森林伐採を嘆く。この大規模森林伐採は、人類の記憶に前例のない気候変動をもたらし、中国中部地方では繰り返し洪水を発生させる。

科学の本中国は、強い。たしかにそうだろう。だが、それは、他の者が屈服するからでもある。だからこそ、チベットの行く末が暗示する意味を判断しなければならない。





科学の本野村正次郎 ”チベット仏教での出家の平均年齢は、日本の中学生くらい、つまり12〜3歳である。もちろん5,6歳のときから出家する者もいるが、最低でもカラスを追い払えるようになってからでなければならない。”

科学の本石濱裕美子 ”ポタラ宮は立体マンダラとしてたてられており、最上階にこそもっとも貴いものが配置されるように設計されている。聖地としてのポタラ宮のパワーは、地下ではなく、最上階にこそ集約される。”

科学の本石濱裕美子 ”樹木の少ないチベットでは遺体を鳥に食べさせる鳥葬が一般的であるものの、高僧の場合は荼毘にふすか、結跏趺坐を組ませたまま遺骸の水分を吸い出し、成形して金箔を貼ったのち塔の中に祀る。”

科学の本ダライラマ法王「直接被爆体験をした広島という地のあなたたちが、この未来への道先案内人を務めるのです。何億もの世界中の人々の願い、それをはっきりと口に出してください。」


著者さん ↓


 

『僧侶と哲学者 チベット仏教をめぐる対話』
 ジャン=フランソワ・ルヴェル/マチウ・リカー

●フランスは、欧米の中でもチベット仏教研究がかなり盛んだった国。そのフランスも、サルコジ大統領が「チベットは中国のもの」と公言してしまった。
 それはさておき、本書はチベット仏教に帰依して深奥を会得したフランス人「元分子生物学者」と、その父親である哲学者との、わかりやすく深く魅せつけてくれるまっこうどっぷり対話。
 貴重です。

こちらで紹介 
→ 『僧侶と哲学者 チベット仏教をめぐる対話』

 →『ミニ特集:中国に民俗を見る本』
 →『ミニ特集:中国に民俗を見る本 2』
 →『ミニ特集:中国ソシャゲ用資料』
 →『ミニ特集:中国について読む本』
 →『ミニ特集:中国について読む本 2』
 →『ミニ特集:ブータンについての本』

 



このページ 『ミニ特集:チベット文化の本』 は以上です。
ネットで拾えるのはちょびっとの情報だけ 
本にはもっともっとたくさんの情報がならんでるよ!
極上の読書体験を
2010年開始。
2013年に突如運営上の問題に見舞われましたが、 皆さんからの支えをいただき、 生き延びることができました。
→2013年の存続の危機
→カンパ応援の数々
その後もTwitter周辺のネット環境激変荒波はハンパなく、かろうじて踏ん張る日々が続いております。

Twitter:@endBooks
botではなく手動です。

連絡窓口:メールフォーム


マジです!感謝です!

便利です!yata


メニュー

科学の本 読書に便利なリンク集
┗ 図書館ネットや
  安い古書情報



科学に佇む3000冊
●twitter 科学に佇む